1-1:特別講習会 質問・回答 【のり枠工指針改訂版】
- 改訂内容の適用について
- 要求性能と照査について
- 25頁5.4.2細骨材
- 35頁6.1.3部分安全係数について~37頁
- 36頁 荷重について
- 36頁6.2.2抑制工として用いる場合の荷重(荷重の算出例)
- 40頁6.2.3 抑止工の併用として用いる場合の設計荷重について
- 41頁6.2.3 抑止工の併用として用いる場合の作用荷重について
- 42頁6.3安全性能の照査定義について
- 46、47頁 6.4使用性能の照査(かぶりについて)
- 51頁6.5.3 鉄筋の継手について
- 52頁 6.5.5抑止工を併用した場合の端部構造について
- 54,55頁7.1.2設計の基本について
- 55頁7.1.3吹付けモルタルの強度について
- 58頁7.1.8(1)スターラップの設置について
- 59頁7.1.9吹付けモルタルの配合設計について
- 64頁のソイルセメントについて
- 65頁7.2.5 吹付工について
- 82頁11.3のり枠工の維持管理
- 54頁 付16頁 枠スパンとアンカーバー、アンカーピンの規格について
- ラス張工
- 道路縦断勾配と縦横枠の設置勾配について
- 付10頁 1.7のグラウンドアンカー品質保証試験では設計荷重の1.5倍の試験荷重を載荷することについて
質問1.全体
質問
- 吹付モルタルの設計基準強度を18N/mm2を標準とすることになるが、適用時期はいつからですか。
- 設計方法が2法あるが、移行するにあたっての期間をどの程度予定されているか。
- 改訂点の発注者への周知や運用開始時期の確認を協会として実施する予定はありますか。
- 平成18年11月以前に設計されたもので、発注が11月以降のものは、適宜変更するのですか。また、15N/mm2で計画されたものは15N/mm2で施工してよろしいのか。
- 1頁に移行期とあるが、いつまでが移行期と考えて良いですか(明確に示さないと、発注者などへ説明や提案ができない)。
- 18N/mm2へ極力早く移行する予定ですが、協会として指導する予定はありますか。また、完全に移行する期日があれば考えを教えて欲しい。
- 過度期であることから従来の許容応力度法も適用して良いとあるが、旧指針に依って15N/mm2で設計してよいですか。もしくは、18N/mm2で設計しなければならないのか。
- 吹付枠工のモルタルの設計基準強度は18N/mm2と改訂されたが、モルタル・コンクリート吹付工(ベタ吹付)の強度は15N/mm2、18N/mm2のどちらですか(発注者への説明)。
- 15N/mm2から18N/mm2へ変更になるに当り、協会はどのような行動(単価アップなど)を行う予定ですか。
- 改訂点の発注者への周知や運用開始時期の確認を協会として実施する予定はありますか。
- 設計基準強度の変更による、セメント量増加や単価増について協会としてどのように行動されるのか。
回答
- 1)~7)
協会としては、18N/mm2へは速やかに、設計法は2~3年程度での移行を期待しています。ただし、改訂指針の適用は
発注機関の決定事項ですので、設計・施工時には発注機関へ必ず確認をしてください。
設計基準強度18N/mm2については、新年度発注案件(設計、施工)からの適用が多いと思いますが、設計・施工時には発注機関に必ず確認をしてください。また、限界状態設計法の適用については、漸次移行していただきたいと思います。(補足)-
現在、施工中、設計中の案件については、発注機関の担当者へ「のり枠工の設計・施工指針」が改訂され、15N/mm2から18N/mm2へ変更されたことを連絡し、案件の設計基準強度、管理強度の確認を行ってください。
また、施工途中で15N/mm2から18N/mm2へと変更しては整合性を欠くので、施工が長期間(数年)継続するような現場をのぞいて、施工が完了するまでは15N/mm2とすることが望ましいと考えます。 - 現状では、各地域の事情に応じて下表の2設計方法のいずれかとしますが、漸次限界状態設計法へ移行していただきたいと考えます。
尚、発注機関にて改訂指針の適用が遅れ、設計基準強度15N/mm2で運用される場合は、設計・施工は旧指針(許容応力度数値、計算方法、鉄筋の重ね継ぎ手長さ)を適用下さい。また、構造細目は改訂指針に準じてください。
-
現在、施工中、設計中の案件については、発注機関の担当者へ「のり枠工の設計・施工指針」が改訂され、15N/mm2から18N/mm2へ変更されたことを連絡し、案件の設計基準強度、管理強度の確認を行ってください。
- 8) この設計法が合理的な設計法であると云われており、国土交通省が発表した「土木・建築にかかる設計の基本」などにより、性能照査型設計や限界状態設計法について基本的な考え方が示されており、将来的には全て限界状態設計法へ変わっていくものと思われます。
- 9) モルタル・コンクリート吹付工については、従来どおり15N/mm2以上と考えています。
- 10)、11) 協会では、管理が十分であれば、現在の配合で18N/mm2を確保できると考えており、単価アップは考えていません。但し、18N/mm2を上回る設計基準強度を採用する場合には、吹付け方法や配合が変わるので、別途積算下さい。
質問2.要求性能と照査について
質問
- 要求性能に対する照査の要、不要や照査にあたってのフローチャートがあると判りやすい。
回答
- 性能照査設計によるのり枠工の設計は、のり枠の要求性能を満たすことができればよく、これまでのモルタル吹付のみでなく、様々な材料や形状、設計の考え方など、今後の技術開発や発展により進歩していくものと考えられます。そうした自由度が期待できる中で将来を見据えた場合、のり枠の要求性能は統一できるが、照査方法は異なるケースが考えられ、性能照査の要・不要は一概に取り決められないことが予想されます。このため、フローチャート等で性能照査の要・不要が一元化できるか、新しい技術の障害とならないかを踏まえて、今後検討していくことが必要となりますので、現時点ではフローチャートの作成は考えていません。
質問3.25頁5.4.2細骨材
質問
- 細骨材の絶乾密度が2.5g/cm3未満のものについては、どのような試験を行って性能を確認するとよろしいか。
回答
- 絶乾密度が2.5g/cm3未満のものは標準ではありません。どうしても使用せざるを得ない場合は、その砂を用いて強度試験を行い、その結果から設計基準強度を設定し、その基準強度をもとに設計を行います。
質問4.35頁6.1.3部分安全係数について~37頁
質問
- 6.1.3部分安全係数に幅がありますが、設計者の判断によって下限値や中間値を用いてかまわないのですか。設計例では上限値を用いていますが。
回答
- 付4頁の付録表1.3「のり枠工の部分安全係数(例)」の数値を標準としていますが、設計者の意図により下限値、中間値を採用する場合は、これを制限するものではありません。
質問5.36頁 荷重について
質問
- 6.2雪荷重について考慮する必要はないのでしょうか。同一県内で雪荷重考慮の要望があったりなかったりしています。また、必要性がない場合の根拠はありますか?
回答
- 全国的には積雪荷重が原因で崩壊した例は少ないと考えられ、一般には必要無いと思われます。しかし、対象となる地域で積雪による崩壊が発生していたり、枠が破損した事例があれば、その事例を基に設計する必要があります。その場合は、設計に用いる積雪の単位質量は地域によって異なるため、県や地域ごとに定める必要があります。
質問6.36頁6.2.2抑制工として用いる場合の荷重(荷重の算出例)
質問
- 法枠は凹凸のある地山に有利であり、崩壊は勾配変化点を起終点とすることが多い。崩壊後の凹凸や勾配変化のある地山では、直線的な崩壊をどのように設定するのが適切ですか。
- のり肩からのり尻に及ぶような崩壊の場合は抑制工として用いることができないとあるが、直高5~7mののり面で、のり肩から水平に1.5m以内の位置からのり尻に直線状崩壊ラインがある場合に適用できないだろうか。できるとしたなら、直高での制限値を設けるのがよいのではないであろうか。(平成19年10月11日追加)
回答
- 直線的な崩壊は、小段があるようなのり面に適用される崩壊で、凹凸のあるのり面やのり面内で勾配変化点が存在するようなのり面では、のり中間からの崩壊として、円弧すべりなどを想定する方法が妥当と考えられます。
-
のり枠工の設計・施工指針 平成18年11月」(以下、本指針という)では、のり枠工単体で抑制できる崩壊規模の概念を「部分的な表層すべり」としています。なお、具体的に適用できない崩壊として、
- のり肩からのり尻に及ぶような崩壊 (図―1)
-
のり肩からの崩壊に対して深さが1.5mを越えるような崩壊 (図―2)
(補足;のり肩からすべり面への垂直方向の深さ。) - のり中間からの崩壊に対して深さが1.0mを越えるような崩壊 (図―3)
これは、旧指針(平成7年度版)の崩壊規模として示されている「表層部の薄い小崩壊に対して、ある程度の抑止力を有する」の適用範囲を構造的な限界と規模の限界から具体的に示したものです。
すなわち、のり枠工単体を抑制工として採用する場合、「表層部の薄い小崩壊に対してある程度の抑止力を有する」および「部分的な表層すべり」の範囲で用いることを前提としています。
(平成19年10月11日追加)
質問7.40頁6.2.3 抑止工の併用として用いる場合の設計荷重について
(平成19年10月11日追加)
質問
- 「縦横のスパンが大きく異なる場合や地山の凹凸が大きい場合は、のり枠工に作用する荷重を1方向梁として取り扱うのがよい」と記載されているが、具体的な判断基準を教えていただきたい。
回答
-
明確な数値基準はありません。
最近では2方向梁と考え設計されていることが多いようですが、過去には、安全側を考えて、一方向梁の設計を標準とするという見解の発注機関もありましたので、設計方法に規準を設けているか否かを確認する必要があります。
質問8.41頁6.2.3 抑止工の併用として用いる場合の作用荷重について
質問
- ロックボルト併用時の枠張り出しについて、極論すると張り出しが5mでも構わず、必要な箇所に設置できるのでしょうか。
回答
- ロックボルト(鉄筋挿入工)は崩壊が予想される区域全体に配置して機能を発揮するものであり、配置間隔があまり広いと土塊の中抜けなどが懸念され、局所的にのり枠に過大な荷重が作用し、ひび割れなどの変状を招く可能性があります。当協会発行の「のり面保護工に関する質疑応答集」41頁では、「一般に打設密度は1本/m2~1本/2m2で設計される例が多い。」と記載されています。また、本指針では、鉄筋挿入工との併用では特に張り出し部を考慮しなくても良い旨の記述があります。グラウンドアンカー併用の場合は、張り出し部を考慮し、当然ながらその曲げモーメントやせん断力を考慮した設計とすべきです。
質問9.42頁6.3安全性能の照査定義について
質問
- 「抑制工として用いる小断面ののり枠」とあるが、その定義は200断面までですか、それとも300断面までですか。
回答
- 抑制工としてのり枠工を用いるのは、のり枠単独で用いるケースであり、一般に30cm×30cmより小さな断面です。
質問10.46、47頁 6.4使用性能の照査(かぶりについて)
質問
- 一般土木では、”かぶり”とは鉄筋芯からコンクリート表面までの長さ(間隔)を云っており、純かぶりと区別されており、法枠でのかぶりは”純かぶり”を云っているのでしょうか。
- 6.4.1(2)のCs:鋼材の中心間隔について、数字による表示が欲しい。
回答
- コンクリート標準示方書 構造性能照査編121頁を参照ください。ここでは設計におけるかぶりを図示しており、本指針においても、かぶりは“純かぶり”を表しています。
- Cs図については、付3を参考にしてください。(この時のℓ1は320㎜程度) また、型枠の構造を確認して設定してください。
質問11.51頁6.5.3 鉄筋の継手について
質問
- 多く用いられるパターンの計算例を示し、図表で数値を把握できるようにできないですか。
- 限界状態で設計された場合、現場管理を行いやすくするためにある程度統一した数式、または数値は算定できないか。
- 定着長算出式にて数値の出し方に不明な点があるので、300、600断面の算出例を教えていただきたい。
- kcを求める因子である、Atとsについて、判りやすく図示できないでしょうか。
回答
- 1)、2) 鉄筋の重ね継ぎ手長は基本定着長以上とし、基本定着長は主鉄筋径、モルタルの設計付着強度、主鉄筋下側かぶり、定着する鉄筋のあき、スターラップの断面積、横方向鉄筋の中心間隔などにより求められます。このため、数多くのケースが考えられるので、現場ごとに算出して下さい。施工計画書作成時に、検算を十分行った表計算ファイルを作成して、現場や施工箇所毎に継ぎ手長さを求めて、その計算結果をタイプ毎に一覧表として、現場に掲示する方法が良いでしょう。
- 3) 別紙に算出例を記載します。
- 4) 3)の計算内容から理解してください。
質問12.52頁 6.5.5抑止工を併用した場合の端部構造について
質問
- 抑止工(グラウンドアンカー工)を併用する図6.5.2では周辺枠(外枠)が記されていないが、通常、周辺枠は施工しないと考えてよいでしょうか。
- グラウンドアンカー併用の場合に張り出し部を設けるのを原則とすることは、周辺部ののり枠は基本的に設けず、もし周辺枠を設置するのならグラウンドアンカー打設ののり枠との縁切りを行うということですか。
- のり肩を保護する目的で周辺枠を設置することがあるが、その場合ののり枠の計算手法について教えて欲しい。また、グラウンドアンカーは縦横枠の交点部(十字型)に設置し、のり肩などの端部については、のり肩排水処理(61頁)で対処するということでしょうか。
回答
- 1)、2)
質問の内容にあるように、周辺のり枠にはアンカーを打設しないことを原則としています。ただし、斜面の状態によりますが、のり肩の風化が進行している場合や、勾配が急な場合は、のり面周辺部に枠を設置した方が良いことがあります。周辺に設置する枠には、のり肩の小崩壊防止やのり面内への流下水防止などの機能を期待するため200×200~300×300の小断面枠を用いることが多いのですが、枠の断面が異なると段差が生じ、景観上好ましくないと判断される場合などでは、周辺枠にもグラウンドアンカー併用の枠と同断面の枠が採用されることがあります。
このように、周辺枠を設置する必要のある場合は、グラウンドアンカーの支承構造物として用いる部分と、周辺枠を縁切りし、別構造として下さい。 - 3)
質問1)2)の内容にあるように、周辺のり枠にはアンカーを打設しないことを原則としています。
のり枠の端部にグラウンドアンカーを設置すると、場合によっては、その周辺の応力状態がその他の部分より大きくなる恐れがあるためにこの規定を設けました。周辺枠の計算手法は特に設定していません。周辺枠の設置については、上記1)2)を参考にしてください。
また、グラウンドアンカーは縦横枠の交叉部にかぎって設置するものではありませんが、枠中間や、やむを得ず周辺枠にグラウンドアンカーを打設する場合は、荷重モデルを適切に設定してください。
質問13.54,55頁7.1.2設計の基本について
質問
- 「のり面勾配が1:1.0より緩く、のり長が10m以下の場合は設計計算を省くことが出来る」との記述がありますが、例えば安定勾配(標準勾配で1:0.6~0.8)で切土したのり面にのり枠工を施工する場合は、設計計算を省略できるのでしょうか。
- のり勾配が1:1.0より緩く・・・。とあるが、標準勾配とは云えないのか?
回答
- 1)、2) この記述は、緑化基礎工や石張基礎工として用いる場合の記述であり、標準勾配や安定勾配を表してはいません。
質問14.55頁7.1.3吹付けモルタルの強度について
質問
- 土木学会 吹付けコンクリート指針案では、強度が30N/mm2まで設定されており、本指針でも同様であるが、施主から24N/mm2や27N/mm2以上の設計・施工を求められた場合、どのように対処したらよろしいですか。
回答
-
空気圧送方式にて、湿式吹付機を用いる施工方法の場合、吹付モルタルの設計基準強度は18N/mm2を標準としています。
18N/mm2を上回る設計基準強度に対しては、湿式吹付機による空気圧送方式以外の施工方法を想定しており、例えば圧縮空気を併用したポンプ圧送方式などによる施工方法があります。これらの施工方法は従来方法と比べて使用機械や配合などが異なるので、市場単価ではなく、別途積算が必要となります。
質問15.58頁7.1.8(1)スターラップの設置について
質問
- 吹付枠工(500断面)にグラウンドアンカーを設置する場合で、計算上せん断補強筋が不要となるケースではスターラップは設置しなくてよろしいか。また、スターラップ設置の必要がある場合の理由はどういうものですか。
- グラウンドアンカーを併用する場合で、計算上せん断補強筋が不要となるケースでは、スターラップの径やピッチをどのように考えればよろしいでしょう。(平成19年10月11日追加)
- 設置間隔は、有効高さの1/2以下でなくともよろしいのですか。
回答
- グラウンドアンカー工を併用する場合は、計算上せん断補強筋の必要がない場合でもスターラップを配置することを原則とします。58頁には、「スターラップの間隔は有効高さ以下とし、最少間隔は施工性・充填性を考慮して250mm程度とするのがよい」と書かれています。質問の場合のスターラップの間隔は、一般的な500×500断面の有効高さ410mmから250mm以上の間隔となりますが、充填性を考慮すると、ピッチは制限値内でできるだけ広いのが望ましく、有効高さ程度とするのがよいでしょう。スターラップを設置する必要性については、「コンクリート標準示方書」に記載されているとおりです。また、グラウンドアンカーを併用する場合は、緊張力から生じる応力が常時作用しますので、原則スターラップを配置としました。一方、鉄筋挿入工や吹付枠工単体の場合は、常時緊張力は作用していないことや、これらを用いる枠は小断面が多く、スターラップを配すると吹付材の充填性が落ちることから、計算上せん断補強筋が不要の場合はスターラップを不要としました。
- この場合のスターラップは、鉄筋径d13程度、配置ピッチは有効高さ程度以下を目安としてください。(平成19年10月11日追加)
- 吹付枠工は硬練りモルタルを吹付けて枠断面を充填するため、鉄筋のピッチが狭すぎると充填性が阻害される恐れがあります。スターラップの設置間隔を有効高さの1/2以下とすると、断面寸法によっては鉄筋のあきが非常に狭くなり、充填性が非常に阻害される恐れがあります。そこで、スターラップ間隔は有効高さ程度以下とし、最少間隔は250mmと制限を設けています。
質問16.59頁7.1.9吹付けモルタルの配合設計について
質問
- 吹付枠工はモルタル吹付を原則としているが、発注者によってはコンクリート吹付を原則としており、協議してもコンクリートの方が材料として安価なため変更してもらえない。モルタルでの施工を認めてもらえるような強力な根拠がないでしょうか。
回答
- 吹付枠に用いる材料としてモルタルを用いるのは、コンクリートに比べるとリバウンドが少なく、はね返った材料が新たに吹付けられた材料に巻き込まれる恐れもなく、鉄筋と枠材との隙間でジャンカが生じにくいなどの特長を有するからです。一般のコンクリートと異なり、硬練りであることからバイブレターなどによる締め固めが不可能なことや、急勾配箇所に吹付けても硬化するまで変形しにくいという特徴がある反面、上述のとおり粗骨材を入れるとリバウンドが多くなり、品質低下を招きやすいことを説明下さい。
質問17.64頁のソイルセメントについて
質問
- 植生基材吹付工を施工した場合の種子の発芽との関係や影響などについての詳細な資料があれば教えてほしい。
- 地山の凹凸処理にて均しモルタルやソイルセメントを用いることとしておりますが、ソイルセメントの品質管理の項目が設けられていないので、品質管理についての項目を設けてほしい。以前、竣工検査で指摘を受けたことがある。例:周辺地盤の土壌と同等以上とするとか。
- ソイルセメントや均しモルタルで不陸整形するときの、積算計上は、どのように考えたらよいか。
回答
- 文献は特にないが、造成後のソイルセメントの表面硬さ、勾配や年間降水量などの水分条件を参考として厚さを決定するのがよいでしょう。
- ソイルセメントはあくまでも間詰め材として用いているため、品質管理項目は設けておりません。
- 積算上では、通常の吹付施工によるものであり、材料が貧配合となるのみであることから満足する公の積算基準は見当たらないと思われます。施工規模や不陸調整の量、施工高さなどの条件でも大きく異なるので、こうした点を踏まえ、現在は施工業者から見積をもらうなどして協議して下さい。
質問18.65頁7.2.5 吹付工について
質問
- 吹付枠工は、一般的に下から上へ吹付けながら積上げていく方法を行っているが、施工能率(工期)の関係で、上から下へ吹付けることがある。その際は、日当りの打設量を考慮してストッパーを使用するようであるが、協会として上から下へ施工する場合の施工指針はないのだろうか。
回答
- 施工指針はありませんが、吹付枠工は下部から上部へ向かって施工することが増えてきています。理由として、リバウンドや変形を少なくすることによって品質を向上させることが目的です。上部から下部に向かって施工する場合には、リバウンド清掃(リバウンドが混入した場合は、直ちに吹きつけ作業を中止し、エア清掃などによりリバウンドを除去する)を入念に行いつつ吹付けるよう指導しています。
質問19.82頁11.3のり枠工の維持管理
質問
- 表11.3.1 枠の亀裂の原因について 記載されているプラスチックひび割れとはどのようなひび割れですか。
- 維持管理の期間の目安はないでしょうか。
回答
- 吹付モルタルからの水分の蒸発速度がブリ―デイングによる水分の供給速度より大きい場合、モルタル中の水分が急激に失われるために生じるひび割れをいいます。吹付け直後の日射、風などにより水分の蒸発が激しい場合、気温の高い時、湿度の低い時などに生じやすいひび割れです。(初期収縮によるひび割れ)
-
維持管理の期間の目安は、供用期間中を通じて適切な時期と表現しており、特別な期間を定めていません。p79 に記載されているように枠と中詰工の要求性能が異なるため、それぞれの必要な段階に応じた維持管理を実施するものとしています。通常時、緊急時、災害時など、状況や現場の危険性に応じて維持管理をおこなうことにしています。
維持管理は、施工後の長期にわたるもので、発注者(管理者)の考え方や維持管理コストを考慮して決めることが必要となり、一概に判断できません。
質問20.54頁 付16頁 枠スパンとアンカーバー、アンカーピンの規格について
質問
-
寒冷地である北海道に於いて、本指針に記載されている標準枠スパンおよび標準アンカーバー・アンカーピン規格を適用しても問題はないでしょうか。また、標準規格を設定した根拠を教えて頂きたい。現状では、各機関、設計者によって異なる規格を用いているケースが多く、統一化したい。
例:枠スパン 200断面 1.2m~2.0m
アンカーバー 枠断面に係わらずD19~22 L=1.0m程度
アンカーピン D13~16 L=0.5m程度
回答
-
54頁に記載してある7.1.2は、勾配1:1.0より緩く、のり長が10m以下にて、吹付枠工を緑化基礎工や石張工基礎として用いる場合には、小断面(15cm×15cm~20cm×20cm程度)で枠スパンは1.2m程度を標準とし、設計計算を省いても良いということです。付15頁に例として示されている200×200、枠スパン1.2m×1.2mを枠スパン2.0mとする場合には、設計計算を行う必要があります。
付16頁にはアンカーバーやピンについて全国的に使用されている例から標準を示しています。これに従わなければならないと言うことではありません。アンカーバーやアンカーピンに求められている機能は、吹付モルタルが固まるまでに、枠が変形したり移動したりするのを防ぐものです。このため、計算で求めるものではなく、経験的に設定されたものです。当然ながら、軟質な地盤では、剛性が高く長いアンカーバーを用いたり、急勾配地ではアンカーピンの打設数を増やすなどの対策を要する場合もあります。
北海道という特殊性に関しては、18頁の解説「完成後に地山が凍上、凍結により膨張して持ち上がる地質ののり面には用いないのを原則とする」と記述されており、採用そのものや中詰工について検討されることも大切と考えます。
質問21.ラス張工
質問
- 地山と密着するよう設置する旨の記載があるが、植生基材吹付工、モルタル吹付工の場合も地山と密着するよう設置するのがよいのですか。また、スペーサーを設置すべきでしょうか。
- 植生基材吹付工における金網の露出度合いの考え方はないでしょうか。
回答
- 「のり面緑化工の手引」では「、繊維ネットや金網はのり面になじみよくアンカーピンなどで固定する(表6-3-2)」と、例として述べられています。詳細については、当協会発行の「のり面保護工に関する質疑応答集 平成12年5月改訂」を参照下さい。
- 協会発行の「のり面保護工に関する質疑応答集 平成12年5月改訂」や日本法面緑化技術協会「のり面緑化技術―厚層基材吹付工」には、金網露出度合いの参考値が掲載されておりますので、参考値としてみてください。
質問22.道路縦断勾配と縦横枠の設置勾配について
質問
- 擁壁では道路勾配に合わせ、勾配が緩い場合は路面勾配に合わせて展開図を作成します。また勾配のついた水路等では計算は鉛直ですが、配筋は勾配(水路の縦断方向の勾配?)に直角にするなどの許容範囲を設けています。のり枠でも道路(縦断)勾配が4%程度までは路面(勾配)に平行な横枠とし、縦枠はそれに直角でも良いのではないでしょうか。その勾配の規定ができないでしょうか。
回答
- 縦断勾配がある道路のり面に格子状ののり枠を設置する場合、縦断勾配と平行に横枠を配し、それに直角に交叉するように縦枠を配したケースや、縦枠を鉛直として横枠は水平に配したケースがあります。のり枠の配置は、縦枠を鉛直として横枠は水平とするのが基本と考えますが、どちらを選ぶかは、のり面の安定性を確保した上で、枠を配置したときの景観(安定感、軽快感、周辺のり面との連続性など)によることが多く、各現場によって条件は異なるので、一概に規定はできません。また、改訂指針にあります「美観・景観に関わる性能」にも関連するので、問題が生じるようでしたら各現場で発注担当者に確認をとる事項と考えます。
質問23.付10頁 1.7のグラウンドアンカー品質保証試験では設計荷重の1.5倍の試験荷重を載荷することについて(平成19年10月11日追加)
質問
- 注意して載荷とあるが、具体的に注意する点はどのような点ですか。
- 試験時に注意して載荷するのではなく、終局限界状態での設計では、この試験荷重に基づいて断面を検討する必要があるのではないですか。
回答
- 付10に記載している文面そのものであり、地盤の性状によっては沈下する場合もありますので、そのような場合は試験を中止して、対策を検討ください。のり面が軟らかい地盤の場合は、枠に試験荷重が直接作用しないような載荷装置を用いたり、計算チェックをすることが大切です。
- 試験荷重が一度限りの一時的な荷重であり、その荷重を用いて断面を決定することは合理的でないと考えています。吹付枠工の圧縮強度が、設計基準強度以上(従来18N/mm2程度以上を発現していたものが多い)の発現があれば、試験荷重を載荷しても破損やひび割れが発生していないことも考慮しました。